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楽になった胃カメラ


 遠藤周作の随筆を読んでいると、患者側の人権に無神経な病院が少なくないことが、ご自分の体験談を交えて書かれているのに、よくでくわす。
 ここでいつも思い出すのは、私が医師になりはじめた研修医の、初めて胃カメラの検査を習った頃のことだ。その頃は、胃カメラもTVモニターに映しだされるような機種もなく、顕微鏡のように一人で小さな穴をのぞきながら習得しなければならなかった。当然、先輩先生も教えたくても教えられないし、こちらも相談したくても相談できない。とにかく患者さんが飲めるまで一人で頑張らねばならなかった。私に当たった患者さんはやはりお気の毒なことに、飲み込むまで大変苦労をされたものである。
 そして、胃カメラ室にはどこもかしこもうめき声があがっていたものだが、そういう日常の中では、こういうのがあたりまえ、胃カメラというのはこういう検査だと私たちは思っていた。
 1年前開業するまで、いろいろ胃カメラをしてきて、時代とともに機種もよくなり、飲み込みやすい細いカメラがでてきた。私の腕も研修医時代より上達した。
 そして何より良くなったのは、検査前、鎮静剤といって少しぼーっとなる薬を静脈注射できるようになったことだ。この薬を注射すると、検査中やや眠くなり、検査が終わって1時間もすると、すっきりしている。眠くなるせいか咽頭の反射も少なく、される方もする方もすこぶる楽になった。
 開業と同時にこの注射を使いはじめ、1年たって気がついたら胃カメラしている間のうめき声がほとんどなくなっていた。不安でたまらなかった患者さんも胃カメラが終わると楽でしたと言ってくれるとこちらも安心する。
 検査は苦しいもの、患者さんの我慢が美徳とされていた時代はようやく終わりを迎えつつあるのかもしれない。
(この文章は2001年の松前町広報に掲載されたものです)

検査中の写真

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